ジョジョ4部小説TheBook感想と考察

OVERHEAVENに続いてTheBookも読みました!
ネタバレ含みながらの感想です

OVERHEAVENはディオが書いたノートって程の本だったから日記感覚で読めたけど、こっちは普通に小説
もしかしたらジョジョ知らなくても読めるんじゃないかな
そしてこのTheBook、乙一感がすごい

救われないっていうか、読んでいてもうヤメテ!もう誰か助けてあげて!って悶えるくらい過去編がきつい
過去って事で杜王町のあの愛すべきスタンド使い達も助けに来ない事が分かっちゃう読者側の絶望感も凄い
今後、ビルの隙間を覗いた時、憂鬱な気持ちになるに違いない

以前、色んな作家さんが参加している小説の書き方って感じの本を読んだ時に、乙一氏の章で「読者にストレスを与える」的なキーワードがあった気がします。
それを解消する事で小説が動くって話だったかな…ちょっと詳しくは覚えてないんですけど、この「読者にストレスを与える」のフレーズは確かにあったと思うんですね。読んだ時に、あぁそいういう系統の多いなぁって思った記憶があるので

今回は過去編がそのストレスですね
とにかく明里さん助かって欲しいし、照彦には相応の罰を与えたい欲求がすごい

ちなみに序章で
「かつてこの町には、一年ものあいだ、ビルの隙間にはさまったままで生存していた女性がいたんだ。鉄塔から出ずにくらす男がいたって、いいんじゃないか」

って台詞があって、読み始めは結構救いがあると思って読んでいました
そこそこ有名なニュースで知られているのか、鉄塔の男の様に何らかのスタンドが絡んでいるのか
実際何らかのスタンドは絡んでいたけどさ…助かってると思ってたんですよね

明里と琢馬の関係に気付いてからは、あぁ過去編辛いよぅ…とちょい憂鬱
ただ、明里のあの生き抜く強さはジョジョ小説だなって感じ
ジョジョに出てくる女性って強いんだよね。精神と書いてこころが
だからもしかしたら、明里がスタンドに目覚めてなんとかなったりしないかなぁなんて物語の流れ無視の願望を持ちながら過去編は読んでました(ちなみに、照彦が海外で鏃で怪我をした行を何故か読み飛ばしていて、結構後半でスタンド使いかよ!となりました)
仗助を子どもの頃に救ったリーゼントの高校生が言及されるもんだから、時を越えて明里を助けるとかあんじゃないの!?とか無いに等しい希望を抱きながら…
縄梯子降りるとこと、【ビルの隙間!】【ビルの隙間!】【ビルの隙間!】
が、まじ気持ちが落ちる

きっと読後感がすっきりしないのは、琢馬って仗助たちが必死に探し出して戦う程、杜王町にとっての悪かな?この物語の中での悪って照彦だし!(過去編のストレス甚大)ていう気持ちと、
きっと仗助たちは琢馬の生涯を露伴のスタンドで知って、照彦に一生後悔し続ける様な、振り向いてはいけないあの場所的な決着をつけるのかなって思ってたんですよ(というかそうしてくれ!と願った)
しかし残念な事に2000年の照彦は実に平和に幸せな人生を歩んでいるだけなんですよね

あと一番は、明里は琢馬に復讐を望んでいなかったと思うんですね
いや、読者としては照彦だけは何が何でも制裁を与えてくれ!って願ったけど、明里が琢馬に願ったのは忘れないでねって事で、明里が夢に見た成長した琢馬は、決して復讐劇に生きる琢馬じゃなくて、明里が拠り所にしていたポストカードの風景みたいな、風のふく草原にいる琢馬を願っていたんじゃないのかなぁって。
そう思うと読後感が辛いんですよね
でも、小説としてとっても面白い本でした!あのくらいの分量あると何日かに分けて読むんですけど、一気読みでした。そんくらい面白いし、続きが気になってページをめくる手が止まりませんでした。
人によると思うけど、これは泣ける小説の部類に入るんじゃないのかなって思います。泣いたし。
漫画のノベライズだから、普通はジョジョキャラの活躍を期待して、読み終わった後はジョジョキャラの活躍を思い返すのだろうけど、私は飛来明里が一番印象に残って、更に思い返しても琢馬、千帆とあらあら私はジョジョ小説を読んだのか?って気になる不思議(笑)

物語が大きく展開する場面の合間に熱いスタンドバトルが挟まっている為、読み終わった時点であれ?って思う点がいくつかあったので想像を交えながら整理してみます

千帆に琢馬が血縁者である事を伝えたのは誰か


ラストの康一くんと千帆の会話で、康一くんが琢馬の事を話そうとした場面にて、「琢馬から聞いたのかもしれないし、死ぬ直前の父親から聞いたのかもしれない。彼女は知っているのだ」と判断していました

ではどちらか?

父親でしょう。琢馬は千帆の家から帰る時に、自身のこれまでの一生をTheBookを使って追体験させたら千帆はどうなるのか?といった想像はしたけれど、実際にそれはせずに本を消し、その代わりにジェットの首飾りを渡しました

一方父親の照彦は、千帆に二度と琢馬とは会わないように言い自身のスタンドについて話しました
「私が望めば、あの少年は二度ときみに近づけない」と。
序章で、『その人は死ぬ少し前に言った。「黒い琥珀の記憶と名付けたんだ。自分の、この能力を・・・」』
といった描写がある為、能力の説明から照彦を殺すまでの少しの間に、千帆と琢馬の血縁を話したんだと思います
つまり、千帆の持ち帰ったジェットの首飾りを見て照彦は「暗闇だ・・・」と呟いた後に話したと想像します

なぜ千帆は父親を殺した?


「台所にあった包丁を、愛する人の胸につきたてた」
と、序章にあるように、千帆が父親を殺したのは確実です
しかし動機が書かれていない…ということで想像します

照彦の能力の説明から殺害までの間に、琢馬との血縁関係を話したと上で書きましたが

血縁関係を話す→殺害
だと、なんだかすっきりしません。血縁関係を話すの中に、琢馬に会わせない!私にはそういう能力があるのだ!が入っていても、
「琢馬に会えなくしてやるって言われたから殺した」
では千帆がサイコ過ぎます

では、スタンドの見えない千帆が照彦の能力を理解した上で、本当に会えなくされては困るから殺した?
これも、一度は試してみると思うんですよね。会えるかどうか。
でも千帆は照彦からスタンド能力の話を聞いてから少し後に照彦を殺しています。試す時間はない。
だから、血縁とか、会わせないとか、能力とか、そういった動機だとなんだか弱い気がします。→私は過去編読んで照彦殺したくなったけどね!動機十分だけどね!
例え血縁関係を話した際に、明里に行った残酷で非道な行為まで暴露していたとしても、私が琢馬の母の仇をとってやるって動機もしっくりしません
だから、もっと何か二人の間にあったんじゃないかと想像してみる

血縁関係を話す→?→殺害
の、?が知りたいわけです

ここで?を想像する前に、実は動機不明の行動がもう一つ

照彦は何故、千帆と琢馬が血縁者だとばらしたのか?

ラストの康一くんの判断を信じれば、千帆は血縁関係を知っています。そして父親から聞いたのだと上で書きました
しかし、スタンド能力で千帆と琢馬が一生会えないようにしてしまえば、今回は予期せぬ事態が起こったとはいえ、自身の過去の過ちを娘に言う必要はない…何故ならそのための幸運な能力なのだから
その晩会いに来たあの日の赤ん坊、実の息子とはいえ琢馬の存在だけで、自身は2000年に幸せな生活を送りながら明里の事を「犬みたいなものだ。そう、あれは犬だ。毎日、餌をあげていた。ずいぶん泥だらけで、小汚いやつだ」と言ってのける照彦が、過去を悔いて懺悔したとも思えない
(織笠英恵はもしかしたら、琢馬の傷を見たリアクションから、そういった感情になった可能性があるかも)

そこで再びラストの康一くんですよ
康一くんは千帆のお腹を触った後に、「あの晩のことを想像した。娘と父の会話。血がながれて、炎がなにもかも焼きつくした。その中心に、きっと、この子がいた」
と、康一くんは想像しています

その想像をお借りしましょう!
殺害に至る経緯の中心にお腹の子どもが関係しているとしたら

千帆は、理由は言わないが謎の能力の話だけは語って琢馬と会うなと言う父親に戸惑いながら、子どもが出来た事を伝えたのではないか
そう想像してみます

これは照彦にとってはとんでもない事です

照彦には20年前と今で変わらない主張があって、

「あの金で、孫にすべり台やブランコを買ってあげたいとおもっている」
「私には夢があってね、孫たちに手品を見せてあげたり、お絵描きをおしえてあげありするんだ」

まだ結婚もしていない男が、子どもどころか孫を見据えて語り、千帆がいる今は自身の夢と語っている
出産を止めさせたい、堕胎させたいという動機が、照彦に琢馬と千帆の血縁関係を語らせたのかなぁと

つまり、
血縁関係を話す→?→殺害
の前に
妊娠を伝える→血縁関係を話す→?→殺害
があったと想像します

こう考えるとなんだか?が少し想像出来そうな気がします

妊娠を知った照彦が、血縁関係を伝えようと思った理由は堕胎を進める為でしょう
自身が望んでいた孫の顔を見て過ごす幸せな余生を送れないと知った照彦は、血縁関係を教えた上で千帆に堕胎を進めた。
倫理的に生んではならないだとか何を言われたのか分からないけれど、千帆はそれに抵抗した
このままでは孫の顔を愛しく見る事が出来ない、その点に関して照彦は20年前から必死です
千帆からしたら自分の子どもを殺せと迫る父親はどう見えたのか、きっと守る為に抵抗したのではないでしょうか

しかしまたここで疑問が。どんな言い寄り方をされたとしても千帆は照彦を殺さなくても逃げれば良かったのでは?
更に、明里にあれだけ冷酷で残酷な仕打ちをする程の男が、自分を殺そうとする千帆をなんとか出来なかったのは、生きがいである千帆を琢馬に復讐の的にされ、夢も失った直後だったからでしょうか?それでも易々と殺されるのかな…?

という事で更に想像を重ねます

もしかしたら、琢馬が生まれながらに復習を自分の生きる目的と考えた様に、千帆と琢馬の子どもも、自分が生まれた理由が復習の産物でありその原因が照彦にあると知る可能性が無いとは限らないと悟ったのかもしれません
なにせ寺に捨てた赤ん坊が、どうやったのか照彦までたどり着いたのだから、照彦の存在がある限り琢馬と同じようにお腹の子どもも不幸な運命を背負って生まれてくる
言い争ったのか話し合ったのか、千帆も照彦もその点に思い至り、殺すことと殺されることを選んだのかもしれない

ちなみに、照彦嫌いが過ぎて思いついたけど考えたくない想像があって。照彦が千帆のお腹の子どもを復讐の運命から解放するために、千帆に自分を殺すように誘導したんじゃないかって事も少し考えました
照彦にとって「孫」って存在は危険な仕事を冒して得たお金で得る人生のゴールの様なもので、自分の存在がその孫の幸せを妨げるならば、自分が死ななければならない。みたいなね。
でも、なら自殺でも良いじゃんってなるし、千帆に「私を殺す覚悟がなければ、その子の幸せは無い」的な事を言ったみたいな想像まではしたけど、その想像をまとめたくないくらい、照彦が嫌いで却下です。そして私は考える事を止めた。

だから千帆は、子どもを堕胎するように言う父親から守る為でも、照彦の過去の悪行に業を煮やした為でも無く、お腹の子どもを復讐の運命から守る為に殺害したのではないかと想像します
照彦も、出産を受け入れる事は出来ないし、かといって千帆に無理強いも出来ないから、生まれてくる孫の為に死を受け入れたと
→まぁ正直、照彦の本性はヤバい奴のままだと思うから、今すぐ堕胎しに行け!!と迫ってばったばた争ってその結果殺されたでも良い気はするんだけどね。逃げる間もなく窮迫した状況だったから殺してしまったとか。…照彦嫌い過ぎかな?


そしてラストシーンでの千帆と康一くんの会話では、復讐の連鎖を自分たちで終わらせたからこそ、
「この子を産んだら、あの人の人生がまったくの無駄ではなかったって、そうおもえるような気がするんです」
と、言えるのだと思うし、琢馬の人生は復讐だけじゃなくて、お腹の子どもに関しては祝福されるものだと考えているのかもしれません


千帆は愛する人と描写された父親よりも、お腹の子どもと生きる事、子どもに復讐のない人生を与える事を選んだのでしょう
子ども守りたいと願う母の強さは明里と同じで、明里が琢馬に願っても与えられなかった地平線までひろがっている草原で過ごす人生を、千帆が琢馬の子に与える事で、琢馬の人生は無駄ではなかったし、明里の願いは琢馬の子どもの人生で叶う

そう思う事で少しは救われるかなと

こんなふうに私は想像してみました!

千帆が警察に見つからずに生活できる理由


これはきっと照彦のスタンドでしょうね
最初読んだ時、母の家ですとか、母がかくまってくれてるってので、なんだか母=明里ってイメージが強すぎて
えっ!?ビルの隙間に住んでんのか!と思ったけど違ったね(・・;)
照彦のスタンドは、「琢馬が千帆に会おうと思っても会えなくなる」能力って話してたから、ビルの隙間とか場所じゃなくて人に効果が出るみたいだから、死ぬ前に千帆に能力を使ったんだと思います
死んで発動するスタンドがあるんだから、死んでも発動している能力があっても良いじゃない。だってすたんどだもの。

色々妄想織り交ぜ感想と想像を書きましたが、最初読んだ時は、あれ?琢馬って千帆に記憶読ませたんだっけ?
やら
TheBookの飛び散ったページが千帆に届いたのかな?
やら
ふわっふわした読み方してたけど、気になって読み返した部分限りだとこんな感じです!
そういうの忘れちゃうくらいスタンドバトルは熱かったです!
特に億泰が思いの外頭脳戦やってて面白かった(笑)

直ぐには二周目できないくらい明里で落ち込むんで、色々読み違い思い違いあったらすみません
気持ち直しに、乙一で一番好きな「暗いところで待ち合わせ」のDVD見ながら寝ます

最後にこの本で好きな一文をご紹介

「遠くへ!遠くへ行くんだ!運命も追ってこない遠くへ!」(広瀬康一)
→康一君素敵すぎ

「冗談さ。猫なんか食うかよ」(岸部露伴)
→食うだろお前は(笑)って序盤は笑いながら読んでました

「母の願いを本能で察したのだろう。自分は【わすれない】という能力を手に入れた」

「さびしくない。だれもさびしくはないのだ。この世に生きている人は、ひとりのこらず。夢の中で彼を見るたびに、明里はおもった。」

まじ泣いちゃうやーつ

おわり!